文字 - BEGADKEPAT とシュワー -


シリア語文法で超重要な原則です。これを知らねば、シリア語の単語をロクに発音することはできませんので、しっかりマスターしておく必要があります。


BEGADKEPAT


閉鎖音p, b, t, d, k, gとその相対摩擦音ph, bh, th, dh, kh, ghは合わせて「BEGADKEPATの文字」として知られ、相互に限られた状況で現れます。

二重子音⇒閉鎖音
BEGADKEPAT の子音が二重子音(ダブル)の形をとるとき、決して摩擦音にはなりません。たとえば、-pp-, -bb-であり、これらは-phph-, -bhbh-となることはありません。

neppel 、 saggi 、 meddem

[-子音]+[…]⇒[…]は閉鎖音
文中でも単語中でも、子音が先行するときBEGADKEPAT の子音は閉鎖音となります。

malkā 、 men bar

[-母音]+[…]⇒[…]は摩擦音
文中でも単語中でも、母音が先行するときBEGADKEPATの子音は摩擦音となります。

neplet ⇒ nephleth
pek-nā ⇒ phekh-nā
ebad ⇒ ebhadh
bbaytā ⇒ bbhaytā
nektob ⇒ nekhtobh

シュワー


定義上「母音」というと、それはシュワーを含みます。シュワーというのはアクセントのない曖昧な母音のことですが、BEGADKEPAT の子音の摩擦音に絡むモノですので、シュワーの位置は予測するようにしなくてはなりません。

語頭の2子音の連続
  • 語頭で2 子音が連続するとき、2 つの子音の間にシュワーが想定されます。

    ktab ⇒ kěthabh
    ʻbad ⇒ ʻěbhadh
    tpalleg ⇒ těphallegh

  • こうした語の2 文字目がBEGADKEPAT の子音である場合、その文は摩擦音となります。上のktab を例に見てみましょう。これはk t 2 子音で始まるから、シュワーがk t の間に入り、t は摩擦音th となります。さらにb は母音a が先行するため、摩擦音bh となります。
    kěthabh

  • これに接頭辞da- がつくと、da-ktab となります。k は先行する母音a のために摩擦音kh となり、t b も依然として摩擦音th bh となります。
    da-khěthabh

  • さらにその前に接頭辞wa- がつくと、w-da-ktab となります。w d は連続する2 子音であるとみなされ、その間にはシュワー(ě )が入ります。もちろんシュワーの影響でdは、摩擦音dh となります。
    wě-dha-khěthabh

語中の3 子音の連続
  • 語中で3 子音が連続するとき、シュワーが2 つ目と3 つ目の子音の間に入ります。

    madbrā ⇒ madběrā
    hallket ⇒ hallěkheth
    atttā ⇒ attěthā
    makkkat ⇒ makkěkhath

シュワーの存在予測
  • シュワーが入るか入らないかは、完全に予測できるものではありません。そのため、当サイトでは混乱を避けるため基本的にシュワーは表記しません。なお上記の原則以外の、よく知られる例外については、そのつど記載していきます。

その他


BEGADKEPAT とシュワーに関係する、その他のルールを紹介します。「その他」と言えど、重要な決まりばかり。最低限、これくらいは必ず覚えておきましょう。

シュワーと語形論
  • 「語頭の2 子音の連続」のルールは、語形論の領域を超えることはありません。例えば、baytā という語で考えてみましょう。語頭のb は文頭あるいは子音で終わる語が先行するかぎり、閉鎖音です。
    しかしb- のような前置詞が前に入ると、前置詞b baytā の間にシュワーが入り、baytā b は摩擦音となります。

    b-baytā  ⇒ bě-bhaytā

  • この法則は、語形の上でb baytā が別モノとみなすがゆえに生じます。つまり、b-baytā bě-bhaytā として認識しても、bbaytā という一語で認識することはないのです。

接頭辞のルール
b- のような接頭辞は、従属する語の音によって、少し音を変えることがあります。そのケースを、以下に紹介しましょう。


  1. 従属語の語頭-(子音)+(母音)
    このとき、接頭辞はシュワーを伴って接頭します。これは「語頭の2 子音の連続」を避けようとする上述の原則に基づきます。

    l + malkā ⇒ lě-malkā
    b + baytā ⇒ bě-bhaytā

  2. 従属語の語頭-(子音)+(子音)
    このとき、接頭辞は母音a を伴って接頭します。これは語頭において子音が3 つ以上、連続することを避けようとするためです。上述した「語中の3 子音の連続」とは異なるので、注意。

    b + mdittā ⇒ ba-mdittā
    w + ktābā ⇒ wa-khtābā

  3. 従属語の語頭-(ālap
    このとき、接頭辞はそのまま接頭し、ālap の母音と同化して発音されます。

    b + urḥā ⇒ burḥā

以上の例から分かるように、BEGADKEPAT の子音で始まる語に接頭辞が加わった場合、語頭子音は必ず摩擦音となります。


BEGADKEPAT
ここではBEGADKEPAT の例外のうち、頻繁に出てくるものを2 つだけ見ておきましょう。動詞の形には原則にそぐわないものも幾つかありますが、それらは現れるたびに記載していきます。

  1. 女性形語尾-tā
    女性形語尾の-tā は、BEGADKEPAT の原則に縛られず、常に摩擦音-thā となります。例えばamtā も、t の前は子音ですがamthā として発音されます。
    ですが、これにはさらに例外があり、女性形語尾-tā の前の子音がt であるとき、二重子音が発生するため摩擦音になりません。例えば、mdittā のようになります。
  2. 人称代名詞・接尾形 二人称複数-kon-kēn
    人称代名詞・接尾形の二人称複数-kon -kēn は常に摩擦音となります。つまり男性形だと-khon 、女性形だと-khēn になります。


「子音と母音」 「音節&アクセント」